2. Puhyuneco『アイドル』とピスタチオ『地球の午后三時』

yeahyoutooの次にインパクトのある出会いだったのがPuhyuneco (プヒュ猫?) の2017.8/31投稿作『アイドル』だったのは私にとって運命的な順序だったかもしれません。

 Puhyuneco - アイドル  /2017.8.31

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おかげで私はいてもたってもいられなくなりUTAUのことを調べてUTAU-Synth(mac OSX用UTAU試用ライセンスツール)をダウンロードし、それを使ってボカロ曲を完成させ、『アイドル』を聴いて1週間後の9/7にはSoundcloudに初のボカロ曲(UTAUオリジナル曲のことも便宜上ここではボカロ曲と言っていきます)をアップしていました。

『アイドル』は(というかPuhyunecoのサウンドは)どうしようもなくAphexTwinを想起させます。音の独特な立ち具合・ヌケの良さ、一聴して感じるピュアネス。AphexTwinを想起させるから素晴らしいのではなく、PuhyunecoPuhyunecoとして、『アイドル』は『アイドル』だから、素晴らしい。

『アイドル』を聴いて感動したのは私だけではなく、Twitterで『アイドル』を話題にしたほとんどの人が衝撃を受けている様子だった。そしてそのピュアネスに対して鈴木O(サンプリングを駆使したトラックのボカロ曲を多く作っているP)さんが言いだしたような気がしますがイノセンスという言葉がキーワードにあがり、Puhyunecoを話題にする人達の間ですぐにジャンル名に近い使われ方で定着していったほど皆が感じるピュアさがある。

私自身は「じゃあそのイノセンスをやろう」などとは思わなかったのですが、そのイノセンス論議には関心があったので自分としてのボカロ処女作『地球の午后三時』の歌詞には「pure..pure..pure..」という言葉を歌詞の題材として盛り込んだりもしました。ツイッターで私はその論議には加わらない代わりに音で・歌でイノセンス「Puhyuneco」や『アイドル』を話題にしてみた、というような感覚でした。

suppaピスタチオ - 地球の午后三時 /2017.9.17

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Puhyunecoさんは『アイドル』を投稿した8/31の時点ではまだツイッターアカウントもあって、本人のつぶやきからPのエッセンスを感じることができましたが、宣言した後9/16にアカウントを消去してツイッターワールドからは姿を潜めてしまいました。

兎角才能があり良い作品を作るPにはナイーヴな人物が多く、いつ創作をやめてしまってもおかしくない際どさがあります。Puhyunecoさんは『アイドル『孤独』の2曲を8/31に投稿して以降、10/23に『Somnia』、11/17に『1/100』を投稿していて現状Puhyuneco名義では『1/100』が最新作なのですが、同一別名義であろうmodelmadicaという名義ではより過激な作風で11/1に『±∋Tょら』、11/14に『八ジ〆まU〒』(共に表記まま)を投稿しています。

 そして、更にPuhyunecoと同一人物なのではないかという説のあるdavid k andersonという2016年から投稿が活発なPもいます。

 david k anderson - 夢を見てる君の白い頬へ、夜空に隠れてキスをする。/2017.5.7

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 どうでしょうか? ストリングスを多様するスタイル、初音ミクの調声(ボカロファンの間では調教とも言います)具合、格調あるドリルンベースマナー、コーラスワークの癖、サムネイルに使われるイラストのタッチ、、。かなりの共通点があり、私も同一人物なんじゃないかと思っています(違ったとしても構わないんですが)。

david k andersonニコニコ動画YouTubeにダブル投稿するタイプなので、まだニコニコ動画に抵抗あった私はYouTubedavid k andersonの過去曲を全部聴いていきました。どの曲もスタイリッシュな美しさとかっこよさがあってとても聴きごたえがあり、聴いていくうちにそれまでボカロに抱いていた固定的イメージがどんどん溶けていくような体験でした。

ニコニコ動画合成音声ONGAKU界隈には多種多様なタイプの音楽性を表現できるPが様々なレヴェルで揃っていて、ボカロにこんな音楽性の曲は無いんじゃないか?と思うような種類の曲調の曲もきっと探せばどこかで誰かが投稿しているように思います。普通の音楽合成音声ONGAKUと比べてその多様性にはなんの差もないでしょう。

いや、それどころか3ヶ月間ニコニコ動画内の合成音声ONGAKUを掘りに掘った私の正直な感想を申せば、ボカロ界ではボカロ以外の一般の日本のROCK/POPS/CLUB/HIPHOPシーンではなかなか見つけられないような、驚愕するほど高度な快感音楽がゴロゴロ転がっており、10年分のアーカイブの海に今も日々素晴らしい曲が加わり続け、海抜を上げていっているんです。

ボカロの曲って高速でアッパーな曲ばっかりなんじゃないかというイメージの方は多いんじゃないでしょうか。でもそれは偏見です。オリコンのヒットチャートに好きな音が見つからないって人にだってインディシーンや知り合いの身近なバンドには好みな曲があったりするでしょう? 当然ながらボカロシーンに置き換えてもきっとおんなじです。

 

 

 

私がニコニコ動画の歴史や初音ミク及び合成音声ONGAKUの歴史についてyeahyoutooPuhyunecoの曲をきっかけにして興味を持った時期がちょうど、初音ミクの10歳の誕生日前後だったことでツイッター上で多くのボカロリスナー(やかつてのリスナー)の人たちがボカロ音楽10年10選・10年100選リストを上げてるタイミングで、まずキュウ(@rooftopster9)さんの10年100選マイリス(その人のお気に入り曲リストのこと)を全部聴いてみたんです、抵抗のあったニコニコ動画にて。

そこで私のボカロへの偏見は完全に消えました。100曲中数曲でも気に入りができたらめっけもんかなって気持ちで聴き始めたのに、キヅミタ、ぶらっく でぃ、みみみエナ、ねこむら、ぐらんびあ、鈴鳴家(円盤P)、Noko、piptotao、gurupon、てんき、kiyu、でんの子P、ヒッキーP、クロワッサンシカゴ、松傘、幼術使い、大仲ヒナタ、Wonderlandica、mayrock、緊急ゆるポート、jake、見切り発車P、大内克之、ミルカ(牛乳中毒P)、MSSサウンドシステム、、などなど、今も特別いいなと思えるPに一気に出会ってしまい、半数以上が好みな曲で、好みではないような曲調でも、その魅力はビシビシ感じられて、結局みんないいじゃないか!となりました。それと同時にニコニコ動画の、流れる歌詞やコメントや各自が工夫して作った動画やイラストと共に全てセットで曲を楽しむという文化にもじわじわと慣れていきました。セットだから伝わる奥行きが確実に在り。

その後はvocanew紹介家として日々合成音声ONGAKU新着曲レヴューをしてくれているa・a(@akhkvocaloid)さん、ygch(@yag_yaguchi)さん、めぐみこ(@megumiko_s)さんのツイートなどで新曲はチェックしつつ、いいなと思ったPの過去曲やマイリスを巡っては驚き、宝の山を前に日々の音楽ライフが一気に華やぎました。

加えて自分もそこに投稿し、参加できるということでクリエイティブなモチベーションが数年ぶりに盛り上がり、いつでも曲を作りたい気持ちで満ちた、音楽家としていたって健康な状態を取り返せています。